
この記事の要約
PHP 5系のシステムを新しくする方法は、PHP 8へ更新するか、別の構成で再構築するかの2つに大きく分かれます。どちらが良いかは、PHPのバージョンではなく、システムの状態と業務の課題で決まります。この記事では、同じPHP 5系で判断が分かれた2つの事例をもとに、判断の基準を紹介します。
「PHPが古いと言われたが、バージョンを上げるだけで済むのか」「作り直しと言われたが、本当に必要なのか」。こうしたご相談をいただきます。
Ouverは、PHP 5系のシステムをPHP 8系へ更新した事例と、別の構成で再構築した事例の両方を担当しました。その経験から、判断の分かれ目を整理します。
1. PHP 5系を使い続けると何が問題か
PHP 5系の公式サポートは、最後の5.6でも2018年12月31日に終わっています。PHP公式は、サポートが終わったバージョンでは、修正された脆弱性(セキュリティ上の弱点)にさらされるおそれがあると案内しています。
ただし、すぐに止まるわけではありません。動いているシステムを慌てて変えるより、まず状態を調べて、順番を決めることが大切です。
更新先のバージョンにも期限があります。2026年11月時点で公式サポートが続いているのは8.2以降で、8.2は2026年12月31日に終わります。これから更新するなら、8.4以降を前提に考えるのが現実的です。
バージョン | 公式サポートの終了 |
|---|---|
5.6 | 2018年12月31日 |
7.4 | 2022年11月28日 |
8.0 | 2023年11月26日 |
8.1 | 2025年12月31日 |
8.2 | 2026年12月31日 |
8.3 | 2027年12月31日 |
8.4 | 2028年12月31日 |
8.5 | 2029年12月31日 |
※PHP公式のサポート情報より、2026年11月時点
2. 「バージョンを上げるだけ」で済まない理由
PHP 5から8への更新は、設定を変えるだけでは終わりません。
- 使えなくなった機能がある:古いデータベース接続の
mysql_関数やereg関数はPHP 7.0で、each()やcreate_function()はPHP 8.0で廃止されました - 同じコードでも動きが変わる:PHP 8.0では文字列と数値の比較の扱いが変わり、エラーにならないまま結果だけが変わることがあります
- 使っている部品の更新が必要になる:ライブラリやフレームワークが、新しいPHPに対応していないことがあります
- 動かす環境も変わる:サーバーのOS、データベース、文字コードの設定も確かめます
特に、エラーにならずに結果が変わる部分は、動かしただけでは見つかりません。業務の結果が正しいかまで、テストで確かめる必要があります。
3. 実例:同じPHP 5系で、判断が分かれた2件
更新を選んだ事例 | 再構築を選んだ事例 | |
|---|---|---|
システム | 専門職向けオンライン研修・受講管理(登録者500名以上) | 倉庫物流会社の在庫・受発注管理 |
相談のきっかけ | 不具合、二重決済、保守会社の対応への不安 | サポート終了への不安、障害時の回答の遅さ、表示の遅さ |
仕様書 | なし。ソースコードから作成 | 現行の仕様を確認して整理 |
調査で分かったこと | 流用できる資産が一定数あった | 更新でも大幅な改修が必要になる可能性が高かった |
選んだ方法 | 既存を活かしてPHP 8系へ更新 | React・Next.js・Node.jsで再構築 |
期間 | 約8か月(調査・文書化・改修・テストを含む) | 約6か月(要件定義・調査を含む) |
研修システムでは、当初は別の言語で作り直すことも検討していました。しかし調査の結果、流用できる部分が一定数あったため、更新を提案しました
事例PHP 5からPHP 8へ、既存資産を活かして刷新|オンライン研修システムの保守引き継ぎ事例。
在庫・受発注システムでは、PHP 8系への更新も検討しました。ただ、互換性の確認に加えて修正とテストまで含めると相応の工数が見込まれたため、AIを調査と開発に活用して再構築する方が、期間と費用を抑えやすいと判断しました
事例PHP 5の在庫・受発注管理システムを約6ヶ月で再構築した事例。
この2件から言えるのは、古さだけでは決められないということです。また、更新の方が必ず短いとも限りません。この2件では、更新の方が再構築より長くかかっています。システムの規模も内容も違うので単純には比べられませんが、「更新なら早くて安い」と決めつけない方が安全です。
4. 判断の分かれ目
確かめること | 更新が向いている | 再構築が向いている |
|---|---|---|
今の機能 | 業務に合っていて、大きく変えなくてよい | 業務とのずれが大きく、見直したい部分が多い |
コードの状態 | 流用できる部分が多い | 流用できる部分が少なく、直す量が多い |
使っている部品 | 新しいPHPに対応した更新先がある | 更新先がなく、置き換えが多い |
困っていること | 主にサポート切れへの対応 | 遅さや使いにくさなど、作りに関わる問題が重なっている |
止められる期間 | 大きく変えず、段階的に進めたい | 新旧を切り替える時期を取れる |
どちらか一方に決めなくてもよい場合もあります。一部だけ直す、よく使う部分から作り直す、といった進め方も、調査の結果によっては選べます。
なお、AIを使えば必ず再構築の方が安くなる、というわけではありません。AIで解析した内容が業務に合っているかは、人が確認する必要があります。在庫・受発注システムの事例でも、仕様とテスト結果の確認に大きな時間をかけました。
5. 費用と期間の考え方
費用は、調査の前には正確に出せません。次のようなことで大きく変わるためです。
- 画面や機能の数、コードの量
- 仕様書やテストの有無
- 使っている部品の古さ
- 外部サービスやほかのシステムとの連携
- 保存されているデータの移し替え
Ouverの場合の目安は次のとおりです(税別)。
内容 | 目安 |
|---|---|
初期調査(ソースコード・サーバーの調査) | 無料 |
再構築を含む業務システムの開発 | 300万〜1,500万円ほど(規模により上回ることも) |
更新や改修 | 調査のうえ、直す範囲ごとに見積もり |
期間は、上の2件で約6〜8か月でした。見落としやすいのは、調査と仕様の整理、テストにかかる時間です。研修システムでも、仕様書がないところから調べて文書にする工程に時間がかかりました。ただ、この工程があったから、何を変えて何を残すかを判断できました。
6. 相談の前に確かめておくこと
- □ 今のPHPのバージョンと、サーバーの環境が分かるか
- □ ソースコードとサーバーの管理情報が手元にあるか
- □ 仕様書や設計書が残っているか
- □ 困っているのは、サポート切れか、遅さか、使いにくさか
- □ 残したい機能と、やめてもよい機能を分けられるか
- □ 今の保守会社との契約がいつまでか
分からない項目があっても問題ありません。何が残っているかを確かめるところから進められます。
PHPの更新か再構築か、調査からご相談ください
Ouverでは、ソースコードとサーバーの初期調査を無料で行い、更新・部分改修・再構築のどれが合っているかをお伝えします。今の保守会社が別にある場合や、開発した会社と連絡が取れない場合もご相談いただけます。




