
この記事の要約
資料を受け取ったあとに、日常作業・異常通知・バックアップと復元・連絡先と変更の承認を後任と確かめます。4つは実務上の整理案です。未確認事項は担当・次の確認日・暫定対応と一緒に残し、業務への影響を確かめます。
システム保守の担当が代わるときは、資料を受け取ったあとに、後任と次の4つを確かめます。
- 日常作業:決まった作業を、後任が手順どおりにできるか
- 異常通知:エラーや停止の知らせが、後任に届くか
- バックアップと復元:データを戻せることを、別の環境で確かめたか
- 連絡先と変更の承認:誰が受け付け、誰が作業を認めるか
この4つは、確認を整理するための実務上の案です。公的な完了の基準ではありません。どこまで確かめれば終えてよいかは、業務や担当の範囲、契約に合わせて関係者で決めます。
この記事が対象にするのは、個別に開発した業務システムやWebシステムです。前の担当と連絡が取れる、通常の担当交代や保守会社の変更を想定しています。技術的な作業は保守担当が行います。経営者は、結果と残る課題を確かめます。

準備:資料の置き場所と管理者を確かめる
資料がそろっても、後任が実際に動かせるとは限りません。手順書が古いことや、通知の宛先が前の担当のままのことがあります。そのため、前の担当と話せる期間に、後任が自分で作業する場を設けます。
その前に、次を一覧にします。
- 業務の優先順位(止まると困る業務から並べる)
- 手順書や設計書の置き場所と、その管理者
- サーバー、ドメイン、外部サービスの契約名義と管理者
資料の一覧には置き場所と管理者を残します。パスワードや鍵の値は集めません。
1. 日常作業:後任が手順どおりにできるか
データの取り込み、月末の集計、ログの確認など、決まった時期に行う作業を一覧にします。後任が手順書を見ながら一度作業し、前の担当は横で見守ります。つまずいた点は、手順書に書き足します。作業の範囲と時間帯は、業務に影響が出ないよう事前に決めておきます。
証明書やドメインは、引き継ぎのために更新を試す必要はありません。期限、契約名義、管理者、更新の手続き先を確かめます。
アカウントは、後任一人ひとりに用意し、必要な権限だけを付けます。パスワードを一律に変えると、他のシステムとの連携や、自動処理用のアカウントが止まることがあります。パスワードの変更は、管理者が影響を確かめてから行います。
2. 異常通知:知らせが後任に届くか
通知の経路は、メール、チャット、監視の仕組みなど、複数あることが多いです。次を確かめます。
- 宛先が、後任と代わりの担当になっているか
- 前の担当の個人アドレスだけに届く設定が、残っていないか
- 試しの通知が、実際に届いたか
- 届いたあと、誰が何をするか
設定を見るだけでは、通知が届くかどうかは分かりません。試せる通知は保守担当が送り、届いたことを記録します。試せない通知は「未確認」として残します。

3. バックアップと復元:別の環境で戻せるか
IPAのガイドラインは、バックアップについて次を挙げています。対象・方法・間隔、保管や世代の管理、復旧の計画、正しく復旧できるかの確認です(出典:IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版」 冊子p.21「適切なバックアップ運用を行う」、確認日:2026-11-05)。
引き継ぎでは、まず次を確かめます。何を、どこに、どの間隔で保存しているか。どの時点まで戻せるか。戻す手順があるか。
そのうえで、本番を上書きしない検証用の環境で、実際に戻せるかを試します。社内の許可とデータの保管ルールに従い、作業は保守担当が行います。技術の担当がいない会社で、経営者や社員が自分で設定を変えて試すのは避けてください。経営者は「いつ、何を、どこまで戻せたか」という結果を受け取ります。

4. 連絡先と変更の承認:誰が受け付け、誰が認めるか
保守では、不具合だけでなく、変更や修正の依頼も受けます。次を決めて書面に残し、後任と社内で同じものを持ちます。
- 不具合や依頼の受付窓口
- 原因を調べる担当
- 作業の前に承認する人
- 作業がうまくいかないときの戻し方
切替当日に確かめること
担当が代わる日に、後任は次を確かめます。
- 自分のアカウントでログインできる
- 止まると困る業務が、いつもどおり動く
- 試しの通知を受け取れる
責任者は、残っている課題と暫定対応を確かめます。問題が起きたときの連絡先と戻し方、前の担当のアクセスを止める時期も、この日までに決めておきます。
未確認事項を残す表
確かめられなかったことは、表に残します。以下は見本です。
項目(置き場所・管理者) | 状態 | 担当 | 次の確認日 |
|---|---|---|---|
月末集計(手順書:共有フォルダ/管理:総務) | 確認済み | 後任 | ― |
夜間エラーの通知 | 未確認 | 後任 | 〇月〇日 |
別環境での復元 | 未確認 | 保守担当 | 〇月〇日 |
帳票の外部連携(A社が保守) | 対象外 | A社窓口 | ― |
「対象外」には、理由を書きます。別の会社が保守している場合も、その会社の窓口と責任範囲を残します。誰も確認しない状態にはしません。
「未確認」には、暫定対応を決めます。たとえば、通知が未確認なら、合意のうえで当面は前の担当にも届くようにします。なお、バックアップが取れていても、復元を確かめたことにはなりません。復元が未確認なら、戻せなかったときの影響と代わりの手段を責任者と話し合い、確認の予定を残します。

よくある質問
Q1. 引き継ぎの期間は、どれくらい必要ですか?
一律には決められません。範囲や業務への影響で変わります。前の担当と話せる期間に、4つの確認と切替当日の確認を行えるよう計画してください。
Q2. 4つすべてが「確認済み」でないと、引き継ぎは終われませんか?
一律には決められません。重要な業務に関わる未確認は優先して確かめます。残す場合は、影響と暫定対応を関係者で合意して判断します。
Q3. 担当が代わったら、パスワードは全部変えるべきですか?
一律には変えません。連携が止まることがあるためです。個人ごとのアカウント、権限の見直し、前の担当のアクセス停止を関係者で決め、変更は管理者が影響を確かめてから行います。
Q4. 復元の確認は、本番の環境で試してもよいですか?
本番を上書きしない検証用の環境で行ってください。社内の許可とデータの保管ルールに従い、保守担当が作業します。
Q5. 経営者は、どこを見ればよいですか?
表の「未確認」と「対象外」、次の確認日、作業を承認する人を見てください。技術の細かな手順まで確かめる必要はありません。
Q6. 前の開発会社と連絡が取れない場合は?
この記事は、連絡が取れることが前提です。取れない場合は、下の関連記事を先にお読みください。
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確認を外部に頼むときは
社内に技術の担当がいない。資料の置き場所や責任範囲が分からない。復元の確認をどう進めるか決められない。こうした場合は、資料を全部そろえてからでなくてかまいません。分からない点を一覧にしたまま、保守会社に相談する方法があります。Ouverの対応内容は「他社開発システムの保守運用引き継ぎ・保守移管」に載せています。
参考資料
- IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版」冊子p.21「適切なバックアップ運用を行う」 https://www.ipa.go.jp/security/guide/sme/ug65p90000019cbk-att/sme_guideline_v4.0.pdf (確認日:2026-11-05)




