SaaSの二重入力を減らすには?連携・追加開発の判断基準
SaaSを導入しても、顧客名や受注内容を別のシステムへ転記する作業が残ることがあります。二重入力を減らすには、まず既存機能と業務の流れを確認し、受け渡しの頻度や必要なタイミングに合わせて、CSV・システム連携・追加開発を選びます。
その前提になるのが、「どの情報を正しい元データとして扱うか」です。データの管理場所や修正ルールが曖昧なまま自動化すると、誤った情報や重複登録も広がりかねません。
この記事では、既存のSaaSを利用している企業の担当者に向けて、二重入力が残る原因、改善方法の選び方、費用と保守の確認事項を整理します。
この記事でわかること
- 二重入力が残る原因と、先に整理すべき業務ルール
- 既存機能、CSV、システム連携、追加開発の判断基準
- 導入前に確認したい費用、保守、二重登録への備え
最初に整理するのは、転記作業1つ
まずは、日々の転記作業を1つ選び、次の情報を書き出してください。
- 移す情報:顧客番号、会社名、受注金額など
- 移す経路:どのシステムから、どのシステムへ渡すか
- 処理の条件:受注確定や納品完了など、何をきっかけに渡すか
- 件数と期限:月に何件あり、いつまでに反映する必要があるか
- 例外への対応:訂正やキャンセルが出たとき、誰がどこを直すか
「別のシステムへの登録が必要」なのか、「一覧を見られれば足りる」のかを分けると、必要な機能を絞り込めます。
SaaSで二重入力が残る3つの原因
原因を整理するときは、「システムが分かれている」「データのルールが違う」「承認・処理のタイミングが違う」の3つを確認します。
たとえば、営業は「受注した日」に売上を登録し、経理は「納品が終わった日」に請求データをつくるとします。
同じ金額を入力していても、登録する意味やタイミングが違います。単純にコピーすると、まだ請求してはいけない案件まで流れてしまうかもしれません。
ほかにも、次のようなズレがあります。
- 同じ取引先なのに、会社名の書き方や顧客番号が違う
- 片方で修正しても、もう片方には古い情報が残る
- 標準機能で出せる一覧を、慣習でExcelにつくり直している
まず決めたいのは、「どちらの情報を正しいものとして扱うか」です。
顧客名は顧客管理、請求先は販売管理など、項目によって管理する場所を決める方法もあります。両方で自由に直せる状態のまま自動化すると、修正がぶつかったときに判断できません。

二重入力を減らす4つの方法と判断基準
まずは、転記する件数と、次の業務に必要になるタイミングで考えます。
1. 既存機能と設定を確認する
入力項目の設定、一覧の出力、標準の連携機能など、契約中のサービスで対応できないかを調べます。
「別のシステムにも同じ情報が必要」なのか、「見るための一覧がほしいだけ」なのかでも、答えは変わります。後者なら、共有する画面や出力方法を変えるだけで、転記をやめられる可能性があります。
標準連携があっても、必要な項目、更新のタイミング、利用できる契約プランまで確認しましょう。
2. まとめて渡せるならCSVを使う
CSVは、表形式のデータを受け渡しするためのファイルです。毎月の締め後にまとめて取り込むなど、すぐに反映する必要がなければ候補になります。
ただし、「書き出せる」と「そのまま取り込める」は別の話です。列の並び、必須項目、日付の形式、先頭が0の顧客番号などを確認します。
毎回ファイルを手直しするなら、その時間も含めて比較してください。取り込み後の件数・合計金額の確認と、同じファイルを二度取り込まない手順も必要です。
3. 転記の頻度や即時性に応じてAPI連携を検討する
毎日何度も情報を移している、担当者が入力するまで次の仕事が止まる。こうした場合は、システム同士をつなぐ方法を検討します。
API連携は、システムが用意するデータの受け渡し口を使って情報をやり取りする方法です。連携サービスを使ってつなぐ方法もあります。ただ、APIがあるだけで、すべての項目を自由に読み書きできるとはかぎりません。利用回数や操作できる項目に制限があるサービスもあります。
たとえばkintoneも、APIの利用回数や一度に処理できる件数などを公式に定めています。実際の設計では、利用するサービスの最新仕様を確認します。
参考資料1
「どちらからどちらへ」「何が確定したら」「どの項目を送るか」まで決めると、必要な連携が具体的になります。
4. 独自ルールが残る部分を小さく追加開発する
標準機能や既存の連携で足りず、取引先ごとの変換ルールや独自の計算が必要な場合は、その部分だけを追加でつくる方法があります。
たとえば、受注データを取引先指定の形式に変換する小さな仕組みです。顧客管理や請求管理のすべてをつくり直す必要があるとはかぎりません。
ただし、業務ルールがまだ頻繁に変わるなら、先に運用を整理したほうが手戻りを減らせます。「昔からこの帳票だから」という理由なら、帳票を変えられないかも確認しましょう。

仮想例で見る顧客管理と販売管理のつなぎ方
ここからは説明のための仮想例です。実際のお客様の事例ではありません。
ある会社で、営業が顧客管理に入力した受注情報を、事務担当者が販売管理へ転記しているとします。
まず、顧客番号をそろえ、販売管理へ渡す対象を「受注確定済み」に絞ります。
月末にまとめて処理でき、件数も少ないなら、CSVの取り込みで足りるかもしれません。毎日の出荷準備に使うなら、必要な時間までにデータを渡せる連携を検討します。
さらに、取引先ごとに商品コードを置き換える必要があり、標準機能では対応できないなら、変換する部分だけ追加開発を考えます。
このように、同じ二重入力でも選ぶ方法は変わります。最初から全部を自動化せず、まず1つの受け渡しで試すと、確認すべき点を整理しやすくなります。

SaaS連携・追加開発の費用を比較する
見積もりを見るときは、初期費用に加えて、次の費用と手間を確認してください。
- 連携サービスや追加機能の月額料金
- 元データの整理、テスト、担当者への説明
- SaaSの仕様変更や項目追加に対応する費用
- 動作の確認、障害の調査、復旧の担当
比較するときは、月の転記件数と1件あたりの作業時間を実際に測り、確認や修正の時間も足します。
減らせる時間から、新しく発生する確認・保守の時間を差し引く。この考え方なら、導入後の負担を見落としにくくなります。時間が減っても、そのまま人件費の支出が減るとはかぎらない点にも注意が必要です。
連携が止まったときの復旧方法を決める
止まったときの対応まで、導入前に決めておきましょう。
誰に通知するのか。どのデータまで処理できたのか。やり直しても二重登録されないか。締め切りまでに直らないとき、手作業に切り替えられるか。
Microsoftの公式資料でも、自動処理を再実行すると、データやメールが重複する可能性に注意するよう案内されています。
参考資料2
顧客情報を外部の連携サービスへ渡す場合は、渡す項目を必要な範囲に絞り、閲覧権限や保存先も確認します。
導入前に確認する5項目
- 正しい元データ:どの情報を正しいものとして扱い、どこで修正するか
- 反映するタイミング:いつ、どの項目を渡すか。キャンセルや訂正をどう反映するか
- 初期費用と月額費用:整理・テスト・運用の手間も含め、減らせる作業に見合うか
- 保守・復旧の担当:誰が異常に気づき、復旧まで業務をどう続けるか
- 二重登録を防ぐ手順:再実行やファイルの再取り込みでも、重複しないか

未確定の項目は、そのまま相談時の確認事項として整理できます。
二重入力を減らす第一歩は、今の受け渡しを1つ整理することです。既存機能、CSV、連携、追加開発の中から、現場で続けられる方法を選んでいきましょう。
SaaS連携・追加開発のご相談
既存機能で対応できる範囲や、連携・追加開発を検討すべきか迷う場合は、株式会社Ouverへご相談ください。
お問い合わせの際は、使用中のサービス名、二重入力している作業、月の件数、必要な反映タイミングを、わかる範囲でお知らせください。
参考資料
※各サービスの仕様は変更されることがあります。導入時には最新の公式情報をご確認ください。